『季刊 枯片吟』公式ブログ ~先天的失言者~

文学フリマに出展している『季刊 枯片吟』のブログになります。

2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

誰に聞こえるわけでもなく

誰に聞こえるわけでもなく、その言葉は空気を少しだけ揺るがせ、やがて拡散してしまう。本当は、誰かに聞かせたい言葉であることは、気がついている。ある種の自覚を持った言葉ではあるものの、文脈や物語の意図が全く感じられず、さながら空気中の分子すら…

あきらかな熱が

話し始めると、鎖骨のあたりから肩にかけて熱を帯びて来るのが自分でも感じられてしまい、頭の奥底では自分が今、偉ぶろうとしていることがわかり始め、抑えめに、かつ自信が失われた形で相手に伝わらない注意をしながら話を続けている。やめればいいのに、…

その目には

その目には、明らかな怪訝の色が窺えて、きみはふと目を逸らす。先ほどまでのきみの発言になんの合理性も論理性も感じられない事は、きみ自身が一番理解をしているはずで先ほどまでと空気の匂いが違う事を真っ先に感づいた。そこできみは違和感を感じる。い…

その発言の後で

彼女はふと気がついたのか、多少ばつの悪い顔をした。信頼関係が揺らいだ。心なしかテーブルの立て付けが悪いような気がする。彼女が目線を逸らした以上に、彼は動揺していたのかもしれない。こんな時に、どこに目線をやるべきなのか、全く分からなかった。…

エレベーターの中で

蒸し暑い日が続いていて、その頃の僕らは常に俯いて歩いている状態であった。随分と分厚い壁が続くビルを抜けると、そのエレベーターの扉が開いていた。エレベーターの中には誰もいない。その湿度の高い個室の中に僕は入り込むと、閉じるボタンを押す。若干…

今日の教訓

破れてしまったものは、元に戻らない。

目が悪い

目が悪い、という言葉は、少し不思議で、見えないわけではないのだから、悪い、という事になる。

体育座り

体育座りをしながら、部屋の真ん中に座りつつ、何時間が過ぎたかわからない。部屋の中には熱気がこもり、肌のあらゆる毛穴から汗が吹き出している。膝の裏から、玉の汗が滴って床に落ち、尻のあたりがぐっしょりと濡れているのが感じられた。携帯電話のアラ…

特にさしたる理由もなければ

雨が降らなければ傘をささないのと同様で、特にさしたる理由もないのであれば、取り立てて騒ぎ立てる必要もない。どうすれば人との比較のスパイラルから抜けられるのか。

何も変わらない

ぼんやりと、流れて行くだけ。

自分に自信がない

と言う事は、はるか昔から知っていた事なのだけれども、どうすれば根拠なく自信が持てるのか、その事は誰も教えてくれないし、教わりたくもない。

注意

知らないおじさんから、注意を受けることが多い。タバコを吸うなだとか、イヤホンからの音漏れがうるさいとか、そう言う類のものだ。得てして、弱いものには強く出たくなるのであろう。確かに、見た目としては歯向かわれる恐れは少ない様な顔をして生きてい…

場面の想像力

どうしてもアイディアが何も生まれず、頭を抱えたまま数時間が過ぎている。すでに終業時間が過ぎてから多くの人は帰宅してしまい、フロアを見渡す限り数人しか確認することが出来ない。 エアコンが停止しており、汗だくになることはないにせよ、肌の表面が…

これだから

カロリー管理を行ったところで、体重が増える日は増えるもので、どうにもならない時期は、流れに身をまかす以外に方法がない。 ここからカエルだとかウサギを使って自分語りを代替させることも出来ないわけではないのだけれども、そんなことはすでに多くの…

会話文の練習

エレベーターホールで、男と女が二人、佇んでいる。あたりは深夜のプールのように静まり返っていて、何処かで雫の垂れる音が聞こえて来そうである。夜はまだ八時をまわっていなかった。 「ふとった?」 女が声をかける。 「いいえ、痩せました」 男が少しの…

月世界

月世界に、旅行に行きたい。月面にはうさぎも、亀もいない。ところで、うさぎと亀と言うのは表面上問題ないのだが、双方ともに飛んでもないモチーフのような気がしてならない。 うさぎがそのうちしゃべりかける。「あたしゃね、すこしの兆しでもあれば、そ…

六本木

六本木のミッドタウンから、地下でヒルズ方面につながる通路を歩いていて、地上の欲望にまみれた通りを見なくて済むから、いいよね、と、一言。 それでもそうは簡単にいかない。