『季刊 枯片吟』公式ブログ ~先天的失言者~

文学フリマに出展している『季刊 枯片吟』のブログになります。

2014-01-01から1年間の記事一覧

鳥取にて2

店内は異様に明るく、この世にはここしかオアシスがないっといったような、そんな主張が込められたかのような光の加減であった。 私は、席に座り、東京で食べるのとなんら変わらないであろうそれを、待つ。すぐに丼は用意される。 隣には、誰もおらず店内の…

鳥取にて1

米子の駅に着いたのは、深夜バスに揺られて翌朝のことだった。新宿を出てから、十八時間は過ぎているのか、時間の感覚は、寸断される眠りと、一時間おきにとまるサービスエリアでの冷たい夜気とで、すでにわからなくなっていた。 私は、この何もない日々を…

休息

休息に入るまでの期間が、あまりにもばたついていたので、しっかりと休むことができるのか多少の不安を抱えていた。 休むにも体力のいるようになってきたわたしは、思い切って東京を離れることにした。わたしが東京を離れるのは、特段珍しいことでもない。 …

目の中に光が差し込むと、想像以上に眩しく、しばらくぶりに地上に出た地底動物が文字通り"日の目を見る"という感覚はこういうものなのだろうかと、瞬きの回数を増やす。 早く眠りに就こうとすればするほど、頭が冴え、長ったらしい本でも読めば、うとうと…

記憶

記憶以上に、改竄されやすいものもないなと思いながらも、酒を控えめに飲んでいたとしても、やはり、その空白は訪れる。それを防ぐ術が、知りたい。

きらめきが

今朝方だったのか、昨日だったのか、何かこういうことを書けばいいのではないかと、風呂の中でか洗面所の中でかふと思いつけた気がしたのだけれども、今になると何もない。 昨日のじゃがいもは、今朝になってポテトサラダに変わって出てきたのだけれども、…

じゃがいも

朝からじゃがいもを食べた。いわゆるふかし芋というものだ。水っぽくて食べられたものではなく、ふた切れほど口にして、箸を置いた。 塩気が少なく、まったくと言っていいほど味がなかったのだけれども、申し訳程度に添えられたバターの塩の味が、口の奥に…

引越し

どうも、引越しをするようだ。季節は春だった。風が強く、しかし心地よく吹いている。多少の埃と、春の香りが入り混じっていた。僕はまたその寮に入り直すようなのだ。しかも、僕の決断で。 三階の端の方に部屋を決めると、寮の敷地内にある円形のタワーの…

間隙

朝から電車が、少しづつ止まっては動き、動いてはまた発進しだすという状況が続いている。雪のせいだ。少し止まり、また動くこのぎこちなさが、なんだか酒を一通り飲み終わった後の、解散までの名残のようで、何か、釈然としないようで、納得のいかない訳で…

群れ

多くの群れが、波を打つように移動をしている。人のようにも見える。男たちの群れだ。黒いコートに、襟のあたりから赤いシャツをかろうじて覗き見る事が出来る。数百人は下らないだろう。 何のためにあれほどの人数が動員されているのか、推測することは出…

再開

新しいiPhoneにしてからというもの、身の回りでも様々な事があって、しばらく更新を休んでいたものの、そろそろ再開しなくてはと思いつつ、しばらくぶりにアプリを立ち上げてみる。 電車内の広告を見れば、怪しげな自社出版の田舎臭い著者の顔が無数に広が…