『季刊 枯片吟』公式ブログ ~先天的失言者~

文学フリマに出展している『季刊 枯片吟』のブログになります。

愛にまつわることわざ

    愛にまつわる諺は、数多あれど、そのどれもがしっくり来ることはなく、決して押し並べて測れるものではないと、ありきたりな感情を抱きつつ、車に乗っている。車は八人乗りのワゴン車で、車内には人が溢れてぎゅうぎゅうである。空がどんよりとした灰色で、あからさまな不機嫌の様相を示していた。この車の中で、何を待っているのか知らされてはいないのだが、先ほどから一切動き出す気配がない。車内の何人かは、褐色の肌をしていて日本人ではないようだ。
   そのうち、とんでもない近くで雷が落ちて、どうも電気がこちらまで伝わって来たようだ。車の中にいるので、感電死の恐れはないのだが、車はおそらくショートしてしまうだろう。そう思った時に、隣の男が車のドアを開け飛び出そうとする。その男よりも自分はドアの近くに座っていたため、必然的に弾き出される格好になる。
   外に出ると、エンジンから火が出ている。このままでは中にいる人が焼け死ぬ可能性があるので、駐車場の端にあった消火器をもって来て、消化活動を始める。念願の消化器だ。いつかは使ってみたかった。
   火が消えると、すでにエンジンはボロボロのようで、全く車が動かせない状態になってしまった。
   さて、どこにいけば良かったのか、分からないが、いく宛がなくなってしまった。