『季刊 枯片吟』公式ブログ ~先天的失言者~

文学フリマに出展している『季刊 枯片吟』のブログになります。

八時くらいの朝日

    八時くらいの朝日が一番まぶしい。

    今朝は早起きをしてみた。風は最近生ぬるい。小学生の群れが元気良く跳ねながら登校をしている。曲がり角を曲がれば、校門の前で先生が立っているはずだ。最近はずっと寝坊気味だったので、このさわやかな場面に出くわしていなかった。先生の隣に大人しそうな優等生らしい子が立ち、一緒に朝のあいさつを撒き散らしている。自分は軽く会釈をして通り過ぎる。

    子供たちが見えなくなる頃に、タバコを咥える。火を付ける。駅まではもう少し、陸橋を越えて、コンビニを通りすぎなければならない。目抜き通りが見える。高校生達がスマホを弄りながらうつむき、歩いて行く。建物と建物の隙間から断片だけを切り取ったように、風景が流れて行く。車、車、高校生、自転車に乗った中年女性、車、高校生。それは、覗き穴からみたパラパラ漫画のようにせわしなく流れて行く。煙を吐き出す。通りに至る。高校生の波を上手く避けて、陸橋に登る。近くに横断歩道があるため、わざわざ陸橋を登る人は少ない。健康と、人の波が苦手なのと、渡った先のかわいいコンビニ店員の笑顔を見るために、わざわざ登る。陸橋の上は一人だ。空の風景だけが切り取られ、足下を走る車は集中線の様に流れて行き、赤と青が紫に、白と黒が灰色に織り混ざり、原型を失って、音だけになる。頭上には雲一つ動かない空がある。空にはさほど興味がない。ただ、自分は地上でも空でもない空間を独占している事を知る。独占と言うよりは、追いやられたと言った方が正しいのかもしれない。

    反対側の階段から、杖をついた初老の男が、登ってくるのが見えた。