『季刊 枯片吟』公式ブログ ~先天的失言者~

文学フリマに出展している『季刊 枯片吟』のブログになります。

そんなに急ぐ必要はなく

    そんなに急ぐ必要はなく、むしろゆっくりと歩いて階段を降りるべきであったにも関わらず、今日も列の中の誰かが小走りとなり、電車の到着する音がみな聞こえたような気になり、一団は一気に早足、もしくは駆け足となる。
   そう言う場合においては常に、反対側の路線の電車が到着するのであって、ホームに降りたところで一様に歩幅を緩め、新たな列を組み、きちんと並び始める。電車の中ではすでに車内が湿度により蒸し暑く、乗車する前に上着を脱げば良かったと、軽めの公開をするわけであるけれども、時はすでに遅く、混雑したままで電車は動き出す。
   先ほど軽く走ったせいなのか、上気して、腰を締め付けるベルトのあたりに、汗の感触を感じ始める。二駅ほど過ぎたあたりで、ようやく座席に座る事が出来たものの、いまだに心拍数は高いまま、そんなに急ぐ必要はなかったのにと、思うのであった。