『季刊 枯片吟』公式ブログ ~先天的失言者~

文学フリマに出展している『季刊 枯片吟』のブログになります。

忘却

    昨日、何を書いたのだか全く記憶がなく、そもそもなんのために書き続けているのかにも興味がなく、掃き溜めにゴミを流し続ける感覚すらあるなかで、それでも時折きらめく何かを見つけたかと思いきや、やはりそれは瓶の蓋か何かで、今時瓶ビールを家で飲むこともあるのかと思い、感心するものの、やはりゴミ溜まりに手を突っ込むのも飽きがき始めて、飽きたからと言ってそこからどうにか出来る状況でも無いわけだけれども、後にも先にも進めなくなってしまった今としては、つないでおきたい気分だけが残り、あの女はメールを書いているのだろうと、今これを書いている時点で気がつきはじめ、ひょっとするとこれを書いているのも自分自身ではなく、湖面に映る向こう側の自分なのではないかと思い募り、いっそその方がすっきりするのではないかと気分の矛先は重心を移し、それでも作業は終わらず、作業なのか、自ら進んではじめた行為なのか判然とせず、眠りに落ちようとすると、書かねばならぬ、起きねばならぬと内側から叱咤し、檄を飛ばされた自分と檄を飛ばした側の自分とに、もはや乖離しかなく、則天去私、自分を離れることが出来ず、固執と誤謬に溢れていて、溢れた誤りが身体中を流れる血を沸点に向かわせて、鼓動となってその振動が全身にくまなく伝わり、久しく他人の鼓動に触れたことのない身にざわめきが走り、ひたすらまた画面を見つめ続け、指先にてその感触を確かめるようにキーボードの側面に擦り付け、さながら賤しいものを祓うようでもあり、しかしそれは小学生が汚物を拭う程度の動作でもあり、大人になればこうしたことは一切行わないと信じていた時分が遥か遠く、遠くといってももうこれ以上近づくことがないのみで、それはもう距離感の問題などではなく、改めてここまで書いたことを見直せば、客観に乏しく、六角形の房で仕切られた空間の中に閉じ込められているのかとすら思い、停電の夜に蝋燭を灯したとき、妙な暖かさを感じたのであるが、その暖かさは線香の香りと共にあり、部屋中が、紫色に覆われている気がするのであって、もう、早朝、結局、うまく眠りにたどり着くことが出来ぬままに、また朝を迎える。