バイク、風を切る
広く、どこまでも直線的な緑色の地平線に対して、青空が緞帳のようにぴったりとその境目を強調しており、雲一つない晴天の中にいる。
何処かの河原か、土手にいて、灰色のアスファルトがまっすぐと伸びていて、道路沿いにプレハブ小屋がいくつか建っている。
なんのためにここに集められたのか、はっきりとはしないのだが、僕はどうもバイクの乗り方をここで練習しなければならないようである。
バイクは、見たこともない光沢の黒い色をしていて、ハンドルの部分が電気湯沸かし器の温度調節のダイヤルのように丸く、太い。それでもエンジンを吹かすと、物凄い轟音を立てて、このまま走り出して転倒すればかなり危険であると、少し不安を感じる。
現実にはバイクを運転したことなどないので、夢の中でのことでもあるし、ヘルメットを一切つけずに乗っている。それでは、早速走ってみようと、近くにいる教官風の男が言う。
走り出すと案外スピードに乗ることが出来、ターンも綺麗に決めることが出来た。僕の運転している姿を、何故か僕地震が見つめている。
二三度スピードを出して、道路を行ったり来たりしているうちに、飽きて来たので、その場にいた何人かと、何か食べに行こうと言うことになる。
その際に、その場にいた女の子が(育ちの良さそうなしゃべり方をしている)、数学の問題を解きながらにしましょう、と提案する。
数ⅠAくらいならまだしも、数Ⅱになると、対応出来ないなと、僕は思う。すると、その場にいた教官風の男が、それならバイクの後ろに女の子を乗せて見なきゃな、と言う。
安直な暗喩が多過ぎて、僕は遠巻きに僕を眺めながら、辟易していたのだが、それはそれで、しょうがないと思い、再びダイヤルのようなハンドルを回し始める。