『季刊 枯片吟』公式ブログ ~先天的失言者~

文学フリマに出展している『季刊 枯片吟』のブログになります。

白い壁の部屋

    白い壁の部屋、と言いつつも、正確には明るい灰色、つまりライトグレーといった色合いの壁に囲まれた空間に案内をされる。

    三人組で訪れたはずなのだが、一緒にいた先輩のみ、別の部屋に通されたようでもう一人の先輩と向かい合って座る事になりそうだ。席に着くなり白い皿に載せられたピザとビールが運ばれて来て、私は明日の体重が気になる。部屋はボックス席のようになっていて、向かい合ったソファーと壁で三方が囲まれ、唯一壁のない廊下に面した空間から店員が料理などを運んでくる。廊下は濃い茶色の板張りで、ニスが所々剥げかかっている。壁の清潔感と静寂感に比べると少し、手入れが行き届いていないような気がしている。

    別の部屋に通された先輩が、どうしているか気になるのだが、軽薄さの少ない上に洒脱という特殊な性質の人のため、特に問題はないだろうし、私が心配する事でもなかろうと、目の前のビールを飲む。目の前のもう一人の先輩に、何かを話さねば、とも思うのだが、現時点では空気の中の何処にも会話の糸口を見出せそうにない。

    僕は壁を見つめる。壁の向こうは湖で、湖畔には緑の美しい木々が生えていて湖面の青さと合わせて絶妙な対比を生み出しているような気がする。

   しかし、その店には窓がなく外に何があるかなど確認のしようが無かった。私は、取り敢えずビールではなく、水を飲み、店員が来るのを待ち続ける。