『季刊 枯片吟』公式ブログ ~先天的失言者~

文学フリマに出展している『季刊 枯片吟』のブログになります。

写真の構図に関する断片

    その写真に斜めに写る人物は、知り合いであり、写真の素材や質感が全く感じられず、どうにも浮世絵然としていて、現実に存在する人物とは言い難かった。大体が、写真の質感がなくなったと感じられるようになったのは、いつからだったのだろうか。私が知覚している違和感は、八年ほど遡る。つまり、デジタルカメラでプリントアウトされたものに対する違和感なのか。あの、デジタル印刷特有の光沢というか、表面のべとつく感じは、すぐに慣れる事が出来なかった。その感覚を得たまま、いまに至る為、画面上に写る写真その他すべてに、不信感すら抱いていた。もちろん、自分も写真に極力写らないようにしていたし、稀に他人の写真に写らざるを得ない事があれば、必ず後悔するのであった。

    その写真に写る人物が、今どこで何をしているのか、薄ぼんやりとしか把握していなかったが、昨年結婚して、幸せに過ごしているようであるとの事を、誰かから伝え聞いたような気がする。それにしてもどうして斜めに立ちながら写真に写ろうなどと思ったのだろうか。確かに容姿は悪く無いし、全体のスタイルもどちらかといえば均衡の取れたものである事に間違いは無かった。とは言いながらも、照明の具合もあざといし、斜めに写っているせいで余白があまり過ぎて、構図を壊している様な感じがしてならないのだ。

    と、言いつつ私は右クリックをすると「画像を保存」を選択し、急いでパソコンの画面を閉じた。