『季刊 枯片吟』公式ブログ ~先天的失言者~

文学フリマに出展している『季刊 枯片吟』のブログになります。

高いところからの夜景

    人は何故、高いところからの風景を望むのだろうか。確かに、高いところには、安全がある。空を飛ぶ生き物以外には危険を感じさせる動物が少ないし、津波もこない。高台は何故だか、人を安心させる。
   屋上にいくのは何故だろうか。今の会社でも、前の会社でも屋上にいける事はなかったので、そんな事は気にしなかった。
   学生寮に住んでいたころ、獅子座流星群が来るというので、二時ごろだったろうか、夜中だ、屋上の冷たい白い床の上に布団を敷き、ひたすらに夜空を眺めた事がある。
   その寮の右手には、高級ホテルが佇んでいて、そこの上の階からは、こちらの屋上が丸見えで、誰かが日焼けをしようと、裸で寝転がっていた夏に、いつの夏だかはわからないのだけれども、クレームが入ったことがあるそうだ。
   そんな、思い出話はさておき、何故、夜景を見つめるのだろうか。空に伸びようとするのだろうか。高さは、強さなのだろうか。手の届かないところにあることが、安全なのだろうか。安全なことが、全てなのだろうか。
   手の届かない、私のことが好きなのよと、その人はいい、そんなことはむしろこちら側の気持ちにはなく、不可解な思いをしながら帰り、十一時台の日曜のテレビを、家に帰ってから点け、不可解なまま眠りに就いたことがある。
   眠りだけは、正解を教えてくれるような気がするのだけれども、その先の夢で私のことを、突き放す。
   飛ぶ夢をしばらくみないように、高いところに登ることが、しばらく、ない。