『季刊 枯片吟』公式ブログ ~先天的失言者~

文学フリマに出展している『季刊 枯片吟』のブログになります。

じわりじわりと

    背後に忍び寄る感覚に気がつかないわけでは無い。無味な言葉の羅列によって織り成されるこの空間は、高校の頃の視聴覚室のように、段々と斜めに下がっていて、上に登れば登る程教壇の上の講師からは遠ざかる形となっている。もちろん教師などはいない。
   その代わりなのか、職場の色々な人がひしめき、多くの事を話し合っている。トイレの方からは別の話し声も聞こえる。
   そのうち、一人がかつかつと音を立てながらこちらに近づいて来る。知った顔ではある。
    こちらに近づくと、すこしだけ手に触れ、去ってしまった。
    僕はこの夢の意味を考え、起きると、やはりそうであるかと、ため息をつく。シャツが汗ばんでいる。前半の記憶が薄れていて、それをどうにかして思い出そうとする。
   しかし、体感した尺ほどの夢の記憶を取り戻す事は、できた試しがない。