じわりじわりと
背後に忍び寄る感覚に気がつかないわけでは無い。無味な言葉の羅列によって織り成されるこの空間は、高校の頃の視聴覚室のように、段々と斜めに下がっていて、上に登れば登る程教壇の上の講師からは遠ざかる形となっている。もちろん教師などはいない。
その代わりなのか、職場の色々な人がひしめき、多くの事を話し合っている。トイレの方からは別の話し声も聞こえる。
そのうち、一人がかつかつと音を立てながらこちらに近づいて来る。知った顔ではある。
こちらに近づくと、すこしだけ手に触れ、去ってしまった。
僕はこの夢の意味を考え、起きると、やはりそうであるかと、ため息をつく。シャツが汗ばんでいる。前半の記憶が薄れていて、それをどうにかして思い出そうとする。
しかし、体感した尺ほどの夢の記憶を取り戻す事は、できた試しがない。