安堵した魂が
安堵した魂が、手元の電子端末に吸い込まれて行く様に、彼の気持ちは晴れやかであった。
晴れやかな事は何もない。明け透けな、見栄や怠惰な感情を一身に浴びて、本来であれば怒りに打ち震え自動で心肺機能が停止しそうになる程の仕打ちにあっているはずであった。
この世はどこまでも不公平で、それが良いと彼自身思って来た。そこまで損得の天秤の上に乗ることもなかったからだ。今は状況が違った。
そちらの方が手っ取り早いことは承知し切っていた。それでも安寧でいたかったし、バランスを保とうとする心理が働き、所作にも現れていた。
容量を超えたのだろう。花粉症が発症する要因として、目の中にゴミや埃を溜めるプールの様なものがあるらしいがそれが許容量に達することで発症するらしい。そんな風にして、心の許容量も超えて行く。積載過多、過剰包装、つまりはいっぱいいっぱいだった。
面白い物語の様なものは全くないし、さしたるきっかけがあるわけでもない。でも、通常はそういうものだ。