『季刊 枯片吟』公式ブログ ~先天的失言者~

文学フリマに出展している『季刊 枯片吟』のブログになります。

本を読むことは

    常々日々の日課であったのだけれども、このところの仕事のボリュームといえば、どうしようもなく降り続ける雪のようにとめどなく、関東風にいえば六月の連続した雨の日のような感覚ではあるのだけれども、それはそれとして、やはり終わらない。終わらないことが良いとされる場面があるとすれば、何かしらの甘美な時間が挙げられるのだろうけれども、世の中は常に終わりに満ち溢れている。だいたいの事が終わらないか、全て未完のままとなり、未完のものもやはり、どこかで区切りをつけなくてはならない。
    その本の表紙は白くて、正確に言えば少し灰色がかっていて、表面がざらざらしていた。手にとって読むにはちょうど良い厚さだし、ポケットにも入る文庫本サイズだ。
   中身に書かれているのは、他愛もない譫言、絵空事ばかりで、しかし自分はそのような戯言以外の事が書かれた本を知らないし、本当に良い読書体験が出来たとは思っている。
   思っているだけならば良かったのだけれども、つい魔がさして「最近はこんな本を読んでいます」だなんてフェイスブックで共有なんぞした日には、わけもわからないまま取り敢えず、いいねボタンを押し、承認の嵐が今日も吹きすさぶ。そのうちに、「なんでこんな本を読んでいるの」と言う、愚問も愚問、脊椎反射で書いたとしか思えないコメントもつきはじめ、人はそんなに行動するのに意図が必要なのかと思い、他人の結果としての意図には興味があるものの、やはり、私は読みたいものを、読みたいだけだし、書きたいもの書いているにすぎないのだ。もちろん、読む上で書き手の意図や工夫の痕跡を追う努力と言うのは、欠かしていないつもりであるのだけれども、神経を逆なでする三歳児以下のような質問に出会う場面があると、一気にその日の仕事を放り投げて、海に出掛けたりしたくなる。海は嫌いなのだけれども。