靴紐
靴紐がうまく結べない夢をみた。夢の中で僕は、スニーカーを履いていて、どうも足に違和感を感じていたのだが、やはり靴紐がほどけていたようである。
その日僕は、招待されていないパーティーに参加せねばならず、主催者からすれば、鼻つまみ者だろうと予測して、会場に出かける途中の事であった。その途中で、靴紐がほどけている事に気がついたのだ。
靴紐は、中々結ぶ事が出来なかった。特に、最後に蝶結びをしようとすると、必ず片方の輪がおかしな事になってしまい、結び直しをしなくてはならないのであった。
なぜそのパーティーに行かなければならないのか、招待状は届けられていないのに、しかし僕は主催者から予め余興の内容を聞かされており、当然参加すべきものだと思い込んでいたのだ。もちろん、主催者も僕がいる事に違和感を感じてはいないのだが、それでも僕は正式な招待者ではなかったのだ。招かれざる客、といえば三文ミステリーが始まる予感があるし、偶然居合わせた者であれば、二流のホームドラマとして成り立つのであろうけれども、僕はそのどちらでもなく、おそらく、ただ招待されるところを忘れ去られた人、として存在しなくてはならなかったのだ。
相変わらず、靴紐を結ぶ事が出来ない。よくよく見ると、紐穴に通すべき順番で、紐が通っていないことも明らかになる。
いよいよ紐は結べそうにないし、パーティーは進行しているので、余興のタイミングは近づいて来ている。この、定まらないまま、僕は会場を後にするか、楽しめないまま余興に参加するしかないのであった。