『季刊 枯片吟』公式ブログ ~先天的失言者~

文学フリマに出展している『季刊 枯片吟』のブログになります。

他者

    他者、をどう捉えるのかと言えば、その事をずっと考えて続けていて、関係性のうちに、私が誰なのか、あなたが誰なのか、わからなくなってくる。私はいつでも誰かをわかろうとし、わかるために行動予測を行い、行ってしまえば常日頃誰かの顔色を窺って過ごしてきたと言っても過言ではなく、そのために何をどうしてきたかという、ライフハック的なあれこれはさて置き、私はあなたのことがどうもわからなくなってきていることは、たしかなのです。
   この場合のあなた、とは、私の事でもあり、あなたはいつも私の事をわかったつもりにならないでと、私にきつく言いつけるのですが、あなたは同様の事を私に対して執り行っていることを、気がついているのでしょうか。多くの屋台が並ぶ中、夏の季節の香りと、湿度と、音がそこら中に飛び交っていて、私とあなたの間だけ、しんと、氷が張り渡ったかのように、静けさを保っています。
   その中で、私は、私の事を考えたのでしょうか。それとも、あなたの事を考えたのでしょうか。私は、あなたの事を考え、あなたは、私の事を考えていたのかも知れません。ただ、それはお互いに何も見えておらず、ひたすらに、互いの間を透き通る何かをみていたのかも知れません。